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うつ病からの仕事職場リワーク(復職支援)プログラムとは?

◎職場復帰のためのリワークプログラムについて

うつ病になって仕事を休まざるを得なくなった人にとって、病気が治るのかという心配と同時に、仕事に復帰できるのかという不安は大きいでしょう。精神科の病院で行われているリワークプログラム(復職支援プログラム)は、そうした不安に応えるためにさまざまなメニューが組み込まれています。うつ病治療専門のストレスケア病棟がある不知火病院(福岡県大牟田市)で実施されているリワークプログラムを例に紹介します

第1章入院と外来の2つのリワークプログラム

リワークは「return to work」の略語です。リワークプログラムは、休職している人が仕事に復帰するためのリハビリとして行われます。不知火病院のリワークプログラムは大きく分けて2種類。うつ病治療専門のストレスケアセンター「海の病棟」で実施される入院患者向けのものと外来でデイケアを利用する患者向けのものがあります。

入院患者向けのプログラム退院前1カ月間に集中して実施するのに対して、外来のデイケアでは最長9カ月間、平均で約4カ月間、時間をかけて取り組みます。今回はこれらのうち、外来のリワークプログラムについて少し詳しくご紹介したいと思います。

外来デイケアのリワークプログラムは、入院期間中のプログラムでは十分に準備が整わなかった人が退院後に利用するケースと最初から外来で利用するケースがあります。症状の程度や復職準備の整い具合に応じて幾つかのグループをご用意していますが、いわゆる「リワーク専門のプログラム」は更に3つのステージで構成されており、段階的に負荷が高くなる仕組みになっています。

第2章職場復帰を想定した実践的なメニューも

デイケアのリワークプログラムは基本的に1日6時間。月曜から金曜まで週5日間のプログラムを組んで います。ご利用初期には原則週3日の参加が条件となっていますが、復職が近づく頃には週5日の安定的な参加が求められます。

物事の捉え方をより合理的で柔軟にしていくための認知行動療法のほか、夏祭りなど季節のイベントの企画・運営に取り組む時間やスポーツ(ソフトバレーボール)の時間などがあり、内容は盛りだくさん。復職に向けて、規則正しく起床・就寝できるように生活リズムを整え、コミュニケーション能力の向上を図り、ストレス発散法を学習します。また、うつ病を発症した要因が何なのか、職場環境や生活環境、自分自身の性格や考え方、感じ方、行動を振り返り、見つめ直します

職場復帰を想定した実践的な訓練になるようなメニューもあります。ある問題について5、6人のグループごとに見解を一つにまとめるコンセンサスゲームもその一つ。実際の仕事でもよくある場面をシミュレートしたゲームで、自分の意見をはっきりと出しつつ、自分と異なる意見にも配慮して合意形成を図るバランス感覚が求められます。また、イベントの企画を行う協働作業なども日頃の対人関係パターンなどが現れやすいため、上司や部下、同僚との関係の持ち方、仕事の進め方などの特徴を振り返るよい材料になります。

仕事の場でもよくあります
仕事の場でもよくあります

第3章リワークプログラムは小~中集団療法が有効

リワークプログラムを利用する人は職種も年齢もさまざま。自分が置かれた状況や自身の問題点を客観的に捉えることや、それを受け入れることは容易ではないように見受けられます。不知火病院の「海の病棟」を退院後、引き続きリワークプログラムに参加することになった男性もそうでした。

ご本人は比較的短期間で且つ、あまり人と関わらないメニューを希望してプログラムを開始されました。しかし、客観的に見てみると対人関係面での課題が残っているように感じられ、短期間利用での復職は再休職のリスクが高いと判断しました。そこで、担当医師とも相談したうえで(本人の希望とは対照的でしたが)他の利用者との交流が多く含まれるグループの中で少し時間をかけてプログラムに取り組んでいただきました。

この男性は対人関係における問題点を指摘されてもすぐに認めることが難しく、正当化を繰り返すことで傷つくことから自分を守ろうとしているようでした。しかし、プログラムが進み、私たち医療スタッフが粘り強く対応していくうちに本人も少しずつ自分自身と向き合い、周りのメンバーにも支えられ励まされながら問題点の改善に努め、復職を果たされました。現在まで長く勤務を継続されているケースです。

この男性の例に限らず、リワークプログラムはうつ病治療と同様に傷つき体験を最小限にするという意味において小~中集団療法が有効だと考えています。同じ病気に苦しむ人たちが復職という共通の課題に取り組むことを通じて、悩みを共有し、不安を緩和する効果が期待できます。

第4章リワークプログラムを終えた9割が仕事復帰

不知火病院のリワークプログラムを終了した人の復職達成率は8割残り1割も元の職場ではありませんが、再就職を果たしています。合わせて9割が仕事のある日常に復帰したことになります。

ただ、復職できたとしても、大事なのは長く勤務が続けられるかどうかということ。現実の社会は厳しく、健康を維持していくためにさまざまなストレスにうまく対応していくことが求められます。リワークプログラムでは復職時に直面する状況を想定し、あえて適切なストレスがかかるように環境を設定しています。医療スタッフも時に厳しく接することでリアリティをもたせ、問題解決とストレスからリカバリーする力を身に付けてもらえるように援助しています。しかしながら、それでも限界があり、プログラムを終えて復職したメンバーからは「厳しく、つらいと思っていた病院のプログラムが今は緩やかに感じられる」といった声も聞かれます。

復職した人が再び休職する事態を防止する観点からも、復職後の状況を確認するフォローアップも大事だと考えています。リワークプログラムを終えた人を対象にしたリワークフォロープログラム毎月1回開いているのもそのためです。同じような体験をしている人の話を聞くことで「私だけが苦労しているわけじゃないんだ」と安心することができますし、うつ病の再発が心配される場合などはスタッフによる面談を組み、診察を受けてもらうなどの速やかなサポートが可能になります。

みんな同じように悩んでいます。
みんな同じように悩んでいます。

最後に

不知火病院は1989年に全国に先駆けてうつ病治療専門のストレスケア病棟を開設しました。うつ病で休職している入院患者の復職を支援するプログラムを2003年から始め、2007年からは外来でのプログラムをスタートさせました。うつ病患者のリワークプログラムは全国各地に広がりつつあります。不知火病院は、一定の要件を満たしてリワークの施設認定を受けた医療機関の一つでもあり、集団療法や心理療法などの要素を組み合わせたプログラムの有効性をさらに高めようと取り組んでいます。

リワークプログラムの重要性はますます増しています。ご興味を持たれた方はお気軽に当院までお問い合わせください

今回のまとめ

  • リワークを終えた9割が仕事復帰

  • 入院向けと外来向けと大きく2種類

  • プログラム後もフォローアップも用意

  • それぞれにあった仕事との向き合い方を

うつ病からの職場復帰リワークプログラムとは?のまとめ

書いたヒト福岡県大牟田市の医療法人社団新光会不知火病院 リハビリテーションセンター主任(作業療法士)徳永 直也( とくなが なおや )

徳永 直也(とくなが なおや)
うつのトリセツ うつ病を知る、防ぐ、チェック、治す。うつ予防のためにできることを。