防ぐ

うつ病予防、どうすれば?
ストレスへの対処法も

うつ病になった人、またはうつ病になりかかっている人には、精神的ストレスが深く関係していると思われます。仕事上でも、あるいは家庭でも、さまざまな人間関係の中で私たちはストレスと無縁ではいられません。

転職や退職、離婚や死別などの出来事に伴うストレスがうつ病を発症する誘因となっています。複雑さを増す現代社会においてはなおさらです。人工知能(AI)をはじめ、技術革新の大波が押し寄せ、私たちの周りには昔はなかったようなストレスの要素が充満しています。

私たちは脳に疲労を与えるストレスとどう向き合えばいいのか、ストレスを軽減、もしくは解消するためにはどうしたらいいのか―。うつ病にならないために、あるいは、うつの症状を和らげるために、ストレスへの対処法を考えます

こんにちは!松下です。脳疲労って言葉ご存知ですかー?普通の筋肉と同じように、脳も疲労がたまるんですよー。今回は、うつの予防方法について、この観点からお話しさせていただきますね。

今回の執筆者「医学博士:松下」

第1章うつ病は過度な精神的ストレスよる疲労が脳に蓄積され起きる

うつ病は、過度なストレスによって脳に疲労が蓄積して起こるとされています。脳も一つの臓器として考えると分かりやすいかもしれません。体の筋肉が身体的ストレスによって筋肉疲労を起こすように、脳は精神的ストレスによって疲労が蓄積されます。

筋肉疲労の場合、自分自身で回復していくようなものであれば特別な医療的治療は必要ありませんが、筋肉に炎症が起きると医療的な治療が必要になってきますね。脳の場合も同じです。脳の疲労がある程度回復できる状態であれば自分自身で対処できますが、それが、うつ病と診断される状態に進むと、専門的な治療が必要になります。

ここで注意しなければいけないのは、ストレス自体は必ずしも悪いものではないということです。ストレスが一切なく、ダラダラしている状態がいいわけではありません。

スポーツでは、適度のストレスをかけることで良い結果を導き出すことができますね。それと似ています。ある程度のストレスがかかった状態で仕事を仕上げると達成感を得られますし、質の高い仕事にもつながります。問題なのは、一定以上の過度なストレスにさらされ続けることなのです。

第2章まずストレスをストレスだと自覚することが重要

ストレスは仕事をする上で、または仕事とは関係なく、人間関係の中でどうしても生じるものです。個人がどんなに頑張っても変えようがない外的要因、環境の問題はありますが、それとは別に、それぞれに自分自身のストレスを軽減させる対処法はあります。

そのためには、前提として、まずストレスをストレスだと自覚することが重要です。暗闇の中でボールが飛んでくると、よけようがなくてダメージが強いですが、明るい中で飛んできたら「来るぞ、来るぞ」と身構えて避けることもできますね。

それ、ストレスかも...!?
それ、ストレスかも...!?

それと同じで、ストレスを意識しているとある程度防御できますが、ストレスをストレスと感じず、予測できない状態でストレスがかかるとかなり強いダメージになります。

また、自分にどれくらいのストレスがかかっているのかを知ることも大事です。自分自身の脳がオーバーワークになっていることに気付かないと、症状の悪化につながります。きつい仕事でも文句を言わず、自分で頑張るしかないと我慢に我慢を重ねて脳に疲労をためこんで症状を悪化させたケースが私たちの病院で診察する患者さんたちの中にも数多く見られます。

第3章うつ病や前段階の脳疲労の状態は誰にでも起きる

うつ病は、いつ、だれがかかってもおかしくない病気です。うつ病の前段階である脳疲労の状態ももちろん、だれにでも起きるものです。さて、脳に疲労をもたらすストレスをどうやって感じ取ることができるのか―。

脳の疲労は、肩こりとか、頭痛とか、人によって症状の現れ方が異なります。以前は問題なくこなしていた仕事があるときからできなくなってしまったということも起こります。若いころは一晩寝るだけですっきりしていたのが、年齢を重ねるにつれて、あるいは何度もストレスにさらされると、寝るだけでは疲れが解消されなくなってしまうということもあります。

では、ストレスを本人が自覚できていない場合はどうしたらいいのか。周囲の人が「最近様子がおかしいよ」とか、「最近眠れていないんじゃないの」などと声を掛けてあげてもいいでしょう。ストレスのサインを早めに見つけることが重要です。

これはストレスではないかと疑ってかかること、そうやって意識をすることによってストレスの感じ方も違ってきます。変調を感じたら早めに精神科病院で診察を受けて専門医の意見を聴くことが有効です。

第4章うつ病にならないために脳が快感を覚える〝ご褒美〟を

それでは、うつ病にならないために、どのようにストレスを軽減し、脳の疲労を癒やしたらいいのか―。脳の疲労は自律神経が影響しているとされていますから、朝起きたら少し運動をするとか、太陽の光を浴びるとか、睡眠のリズムを整えることが疲労回復に効果的です。何よりも充分な睡眠をとることとちゃんと食べることが大事です。

充分な睡眠と食事、少しの運動を
充分な睡眠と食事、少しの運動を

軽度の脳疲労では、睡眠をとることで良くなる場合もあるし、おいしい物を食べて良くなる場合もあります。旅行好きな人は旅行に出掛ければいいし、カラオケで声を出したり、スポーツ観戦だったり、映画を見てすっきりするのもいい。それぞれ自分に合った方法でいいでしょう。

要するに、ストレスを感じたときには、脳が快感を覚えるような〝ご褒美〟を与えることが必要です。脳に〝ご褒美〟を与えることで、疲れがある程度中和されます。

たまに愚痴をこぼしたり不安や不満を口に出したり、自分の気持ちを吐き出すことでも、ストレスの防御になります。ただし、食べるのも、お酒を飲むのもいいですが、食べ過ぎや飲み過ぎは逆にストレスになります。何事も過度は禁物。ほどほどにしなければなりません。

最後に新タイプのうつ病が、若年層を中心に増えている事実と向き合う

うつ病は、過度なストレスによって脳に疲労が蓄積して起こるとされています。注意しなければならないのは、ストレス自体が必ずしも悪いものではなく、問題は、一定以上の過度なストレスにさらされ続けることにあります。

うつの症状を和らげるために、そしてうつ病にならないためには、まずストレスをストレスだと自覚することが重要です。脳がオーバーワークになっていることに気付かないと症状が悪化します。

脳の疲労を癒やすためには、充分な睡眠をとることとちゃんと食べることが大事です。変調を感じたら早めに精神科の病院で受診して専門医の意見を聴くことをお勧めします。

これらを意識して、普段の生活を満喫されてください。最後までお付き合いいただいて、ありがとうございました。

今回のまとめ

  • 過度なストレスにより脳に疲労が蓄積する

  • ストレスをストレスだと自覚することが重要

  • 脳がオーバーワークになっていないか意識

  • 変調を感じたら早めに専門医の意見を

  • 脳にほどほどの"ご褒美"を与えることが必要

書いたヒト 日本精神神経学会 専門医 / 日本精神神経学会 指導医不知火病院 院長医学博士:松下 満彦( まつした みちひこ )

2018年に日本精神神経学会学術総会にて「ストレスケア病棟への入院した 51,662 人のうち、入院中に生じた自殺既遂例の調査」を発表し優秀発表賞を受賞。福岡大学病院診療准教授を経て、現在、不知火病院院長。所属学会:日本精神神経学会(専門医・指導医)、日本うつ病学会(評議員)、日本ポジティブサイコロジー医学会、日本社会精神医学会、日本サイコオンコロジー学会、日本精神分析学会、日本精神集団療法学会、日本生物学的精神医学会、日本神経精神薬理学会、 日本東洋医学会。

福岡県大牟田市:不知火病院
(うつ病専門病棟も)